パパさん日記

妻、娘1人、犬1匹と一緒に暮らす平凡な臨床検査技師のパパさんです。

高頻度抗原と抗JMH抗体:最新情報

パパさんです。妻、娘1人、犬1人と一緒に暮らしています。地方の病院で臨床検査技師をしております。検査技師のことだけでなく、子育てやワンちゃんとの生活、資産運用(投資)のことなど様々なジャンルについてお話します。

今回は稀な血液型JMHについてお話していきたいと思います。主要な高頻度抗原に対する抗体をお話していければと思います。自分の勉強も兼ねていますのでお付き合いください。また、少し専門的な言葉が多いかもしれませんが、ご承知おきください。JMH抗原に対する抗体の抗JMHは高頻度抗原に対する抗体の中でかなりメジャーなので認定輸血検査技師を受けられる方は必ずチェックしておきましょう。

 

 

特徴(性質)

特徴(性質)は、以下のようになります。分かりやすく箇条書きで示しています。

◆免疫グロブリンクラス:IgM<IgG

 *サブクラスはIgG4が多く、IgG1、IgG2、IgG3は稀である。

◆間接抗グロブリン試験(IAT):◎

◆パパイン/フィシンによる抗原への影響:凝集陰性化

◆DTT(0.2M)による抗原への影響:凝集陰性化

◆HTLA(high titer low avidity)抗体様の凝集パターンを示す。

 *抗体価が128倍などの高力価でも、凝集の強さは1+などの低凝集を示します。

抗JMH抗体

JMH抗原は高頻度抗原として知られています。名前の由来は、John Milton Hagenさんから発見された抗体であるからです。自分の名前が後世に語り継がれるなんて光栄ですね。JMH型は高齢者に多く、60歳以上の検出頻度が高めであるそうです。輸血歴や妊娠歴がなくても抗JMHが検出された自然抗体の症例もありますが、ほとんどは後天的な免疫感作が影響して抗体が産生されます。高頻度抗原とは、名前の通りほとんどの人が持っている抗原です。なので、不規則抗体検査をすると自己対称(自己血球)との反応を除き、全て陽性になります。

実際のルーチンの流れとしては、

 

不規則抗体スクリーニング検査で全て陽性

         ↓

不規則抗体同定検査で自己対称(自己血球)を除き全て陽性

         ↓

高頻度抗原に対する抗体を疑い,最寄りの血液センターに精査依頼

 

という風になると思います。高頻度抗原に対する抗体を疑うまではいけると思いますが、自施設で同定までには至らないと思います。抗JMH抗体は、高頻度抗原に対する抗体の中では比較的症例の多い抗体ですので、施設によっては凍結した血漿を保管している場合は同定できるかもしれませんね。同定結果が返ってくるのは1週間前後かかると思ってもらっていたらと思います。検体を提出する際に急ぎでと伝えている場合はもう少し早く速報値が返ってくるかもしれません。

ただ、前述したとおり抗JMHは酵素処理した血球で凝集が陰性化する上に、IgGのサブクラスはIgG4がほとんどです。なので、IgG4とは反応しない抗IgG試薬を使えば反応しません。そんな都合のいい試薬なんてあるのかよと思うかもしれませんが、これがあるんです。ズバリ「ガンマ クローン 抗IgG」です。添付文書にも、IgG4抗体は本製品では検出されないと書かれてあります。以上のことから、酵素処理で陰性化、ガンマ クローン 抗IgGで陰性化したらほぼほぼ抗JMHでいいんじゃないかなーと私は思っております。もちろん、JMH-血球と反応しないことを確認できていないので同定はできませんが、ほぼほぼそうだよねって推測することはできると思います。

頻度

JMH-の頻度について述べられている文献を探すことはできませんでした。血液センターの稀血分類ではI群に分類されています。I群はⅡ群よりも低い検出頻度になります。名前は聞くけどなかなかお目にかかることはできないかもしれません。

臨床的意義

抗JMHは輸血や妊娠による免疫感作で抗体を産生します。IgGのサブクラスがIgG4なので臨床的意義は低いと言われています。IgG1、IgG3の抗体は溶血を起こす可能性が高くなります。抗JMHによる新生児溶血性疾患を起こした症例はまだ報告されていません。抗JMH保有者に、JMH陽性赤血球を輸血した症例は多数ありますが、ほとんどの症例で輸血後副作用なく経過しているようです。一部例外的に輸血副作用を起こした症例もあるみたいですが…。

JMH-血の準備は、最寄りの血液センターに問い合わせて、ドナーが確保できるようでしたら翌日には準備ができるかもしれません。どちらにせよ時間がかかるものなので臨床側との連携を密に行っていきましょう。

どうしても間に合わない場合は、不適合輸血をするしかありません。クロスマッチ陽性の血液を入れるしかありません。輸血後は、血液データや上清を見て溶血を起こしていないか観察していく必要があります。もちろん血尿が出ていないかも確認してください。ただ、不適合輸血で重篤な溶血を引き起こす可能性はかなり低いです。かなり低いだけで0ではないのでご注意ください。

最後に

今回は少し輸血検査の専門的なお話をさせていただきました。ブログにすることで私自身、頭の中にすっきりと入れることができました。これから臨床検査技師として働かれる皆さんや認定輸血検査技師を目指されている皆さんの参考になれば幸いです。すこしでもいいなって思ってくれた方は下の「サポート」からパパさん一家をサポートしてもらえたら励みになります。 それでは。

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