パパさんです。妻、娘1人、犬1人と一緒に暮らしています。地方の病院で臨床検査技師をしております。検査技師のことだけでなく、子育てやワンちゃんとの生活、資産運用(投資)のことなど様々なジャンルについてお話します。
今回は稀な血液型Jraについてお話していきたいと思います。主要な高頻度抗原に対する抗体をお話していければと思います。自分の勉強も兼ねていますのでお付き合いください。また、少し専門的な言葉が多いかもしれませんが、ご承知おきください。Jra抗原に対する抗体の抗Jraは高頻度抗原に対する抗体の中でかなりメジャーなので認定輸血検査技師を受けられる方は必ずチェックしておきましょう。
特徴(性質)
特徴(性質)は、以下のようになります。分かりやすく箇条書きで示しています。
◆免疫グロブリンクラス:IgM<IgG
*サブクラスはIgG1が多く、時にIgG3も認められる。
◆反応温度域:4℃:ー 22℃:〇 37℃:〇
間接抗グロブリン試験(IAT):◎
◆パパイン/フィシンによる抗原への影響:反応増強
◆DTT(0.2M)による抗原への影響:影響なし
◆HTLA(high titer low avidity)抗体様の凝集パターンを示す。
*抗体価が128倍などの高力価でも、凝集の強さは1+などの低凝集を示します。
抗Jra抗体
Jra抗原は高頻度抗原として知られています。Jra抗原はJR血液型として32番目の血液型システム(ISBT032)に組み入れられています。Jr(aー)型の人が産生する抗Jra抗体は、日本で最も頻繁に検出される高頻度抗原に対する抗体と言われています。高頻度抗原とは、名前の通りほとんどの人が持っている抗原です。なので、不規則抗体検査をすると自己対称(自己血球)との反応を除き、全て陽性になります。
実際のルーチンの流れとしては、
不規則抗体スクリーニング検査で全て陽性
↓
不規則抗体同定検査で自己対称(自己血球)を除き全て陽性
↓
高頻度抗原に対する抗体を疑い,最寄りの血液センターに精査依頼
という風になると思います。高頻度抗原に対する抗体を疑うまではいけると思いますが、自施設で同定までには至らないと思います。抗Jra抗体は、高頻度抗原に対する抗体の中では比較的症例の多い抗体ですので、施設によっては凍結した血漿を保管している場合は同定できるかもしれませんね。同定結果が返ってくるのは1週間前後かかると思ってもらっていたらと思います。検体を提出する際に急ぎでと伝えている場合はもう少し早く速報値が返ってくるかもしれません。
頻度
Jr(aー)の頻度は、多民族と比べて日本人に検出される割合が多いと言われています。日本では、2000~3000人に1人の割合でJr(aー)が見つかるそうです。0.0003%~0.0005%ぐらいになりますね。2000~3000人に1人と言われると意外とすぐに見つかりそうと思いますが、0.0005%と言われるとやはりかなり低い確率ですよね。また、どの血液型にも言えるのですが、Jra抗原の発現量が少ない個体もあり、使用する抗体(血清)によってはJr(aー)と判定されてしまうので注意が必要です。Jr(aー)の人は、輸血や妊娠などの免疫感作によって抗Jra抗体を産生しやすいです。いざ輸血しようとしたときに「あなたは血液の適合する確率は2000~3000分の1です。」と言われたらビビりますよね。
臨床的意義
抗Jraは輸血や妊娠による免疫感作で抗体を産生します。割合としては輸血で産生されるよりも妊娠で産生されることの方が多いです。そのため必然的に同定割合は女性>男性になりますよね。抗Jraをもつ母親から生まれた子供は直接クームス試験(+)になったとしも、新生児溶血性疾患(HDFN)になることはまれと言われています。ほとんどの症例は、無治療か光線療法で対処できるそうです。
ただ、最寄りの血液センターに問い合わせて、ドナーが確保できるようでしたら翌日には準備ができるかもしれません。どちらにせよ時間がかかるものなので臨床側との連携を密に行っていきましょう。
どうしても間に合わない場合は、不適合輸血をするしかありません。クロスマッチ陽性の血液を入れるしかありません。輸血後は、血液データや上清を見て溶血を起こしていないか観察していく必要があります。もちろん血尿が出ていないかも確認してください。ただ、不適合輸血で重篤な溶血を引き起こす可能性はかなり低いです。かなり低いだけで0ではないのでご注意ください。なので、ガイドライン上も可能な限りJr(aー)血を準備するように書かれてあります。
最後に
今回は少し輸血検査の専門的なお話をさせていただきました。ブログにすることで私自身、頭の中にすっきりと入れることができました。これから臨床検査技師として働かれる皆さんや認定輸血検査技師を目指されている皆さんの参考になれば幸いです。すこしでもいいなって思ってくれた方は下の「サポート」からパパさん一家をサポートしてもらえたら励みになります。 それでは。
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