パパさんです。妻、娘1人、犬1人と一緒に暮らしています。地方の病院で臨床検査技師をしております。検査技師のことだけでなく、子育てやワンちゃんとの生活、資産運用(投資)のことなど様々なジャンルについてお話します。
今回は稀な血液型D--(ディーダッシュダッシュ)についてお話していきたいと思います。主要な高頻度抗原に対する抗体をお話していければと思います。自分の勉強も兼ねていますのでお付き合いください。また、少し専門的な言葉が多いかもしれませんが、ご承知おきください。読み方からなんじゃこれって感じだと思いますが…。かつては-D-(バーディーバー)と呼ばれていたものです。並びが変わるだけで読み方も変わってくるんですね。輸血の世界にいないと絶対読めない自信があります。
検査データ
検査データとしては、赤血球抗原の検査で抗Dと反応はしますが、抗C、抗c、抗E、抗eと反応することはありません。表記としてはD--(D--/D--)になります。D--に発言している抗原としてはD、G、Rh29のみが発現しています。ちなみにRh17とRh29は高頻度抗原に分類されます。
ハプロタイプ | D | C | c | E | e | G | Rh17 | Rh29 |
D-- | + | 0 | 0 | 0 | 0 | + | 0 | + |
D--の人は通常のRh抗原のC抗原、c抗原、E抗原、e抗原を持たない分、D抗原がめちゃめちゃ強いです。その他のRh抗原をD抗原に全振りした感じです。しかも、片手にD--を持っているだけでも(例DCe/D--)D抗原が強くなるみたいです。
抗Rh17抗体
輸血や免疫感作によって、D--は高頻度抗原のRh17(別名:Hr0)に対して免疫抗体を産生しやすく、血漿(血清)中に抗Rh17抗体が検出される。前述したとおりRh17抗原は高頻度抗原です。名前の通りほとんどの人が持っている抗原です。なので、不規則抗体検査をすると自己対称(自己血球)との反応を除き、全て陽性になります。
実際のルーチンの流れとしては、
不規則抗体スクリーニング検査で全て陽性
↓
不規則抗体同定検査で自己対称(自己血球)を除き全て陽性
↓
高頻度抗原に対する抗体を疑い、Rh抗原の検査を行ったところD--であることが判明
↓
抗Rh17抗体を疑い、最寄りの血液センターに精査依頼
という風になると思います。疑うまではいけると思いますが、自施設で同定までには至らないと思います。同定結果が返ってくるのは1週間前後かかると思ってもらっていたらと思います。検体を提出する際に急ぎでと伝えている場合はもう少し早く速報値が返ってくるかもしれません。
頻度
ここで、先にメンデルの法則の説明を…。簡単に説明しますが、メンデルの法則は遺伝子型が、AA⇒A型、AO⇒A型、OO⇒O型という風になります。この場合、Aが優性遺伝子(顕性遺伝子)、Oが劣性遺伝子(潜性遺伝子)になります。つまり、優性遺伝子(顕性遺伝子)と劣性遺伝子(潜性遺伝子)が共存するとき優性遺伝子(顕性遺伝子)の表現型になるのです。
話を戻します。D--は(D--/D--)でないとD--になりません(←上手く伝えれていないかもしれません)。このD--という遺伝子自体が珍しくその2つを持った人はさらに珍しいです。つまり何が言いたいかといいますと、D--は両親から稀なD--を受け継いでいるため血族結婚が多いといわれています。ある文献では20万人に1人とされていますが、実際の頻度はもっと低いのではないかとも言われています。前述したようにD--の人は、輸血や妊娠などの免疫感作によって抗Rh17を産生しやすいです。いざ輸血しようとしたときに「あなたは血液の適合する確率は20万人分の1です。」と言われたらビビりますよね。
臨床的意義
D--の人が産生する抗Rh17抗体の臨床的意義の説明をしていきます。ここでいう臨床的意義は、輸血副作用{溶血、血圧低下、血尿(ヘモグロビン尿)、ヘモグロビン低下など}を指しています。抗Rh17抗体は臨床的意義があるので、抗Rh17抗体を保有している人はD--血を選択する必要があります。D--が先ほど述べたように20万人に1人以下の確立なので、すぐに献血ドナーが現れるわけではありません。なのでD--のような稀血(マレケツ)は、解凍赤血球液-LRを使用することが多いです。解凍赤血球液とは、稀血の人を献血したときに、特別な処理して凍結して10年間保存することができます。そして、D--が必要な時に、特別な処理をして凍結した赤血球を解凍します。解凍後の期限は、4日間になるので注意が必要です。D--の準備は最短で2日かかると思っていたほうが良いと思います。ただ、最寄りの血液センターが解凍処理などを自施設でおこなえる場合は当日準備ができるかもしれません。どちらにせよ時間がかかるものなので臨床側との連携を密に行っていきましょう。
どうしても間に合わない場合は、不適合輸血をするしかありません。クロスマッチ陽性の血液を入れるしかありません。輸血後は、血液データや上清を見て溶血を起こしていないか観察していく必要があります。もちろん血尿が出ていないかも確認してください。
最後に
今回は少し輸血検査の専門的なお話をさせていただきました。ブログにすることで私自身、頭の中にすっきりと入れることができました。これから臨床検査技師として働かれる皆さんや認定輸血検査技師を目指されている皆さんの参考になれば幸いです。すこしでもいいなって思ってくれた方は下の「サポート」からパパさん一家をサポートしてもらえたら励みになります。 それでは。
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